法務スペシャリストの転職やキャリアップに役立つ! 書評連載「会社役員のための法務ハンドブック」|法務・パラリーガル・弁理士・知的財産の転職・求人情報なら「法務求人.jp」

転職ノウハウ

法務スペシャリストの転職やキャリアップに役立つ! 書評連載「会社役員のための法務ハンドブック」

目次
  • 1.「会社役員のための法務ハンドブック」とはどんな本?

  • 1-1.お勧めする理由

  • 1-2.企業法務の専門家が執筆した基本書

  • 2.どんな人にお薦め?

  • 3.お薦めの読書法

  • 3-1.大企業・一部上場企業などの大手企業に応募する場合

  • 3-2.「役員をサポートする法務部員」や「役員候補」として応募する場合

  • 3-3.グローバル企業に応募する場合

  • 3-4.総務や人事と一体となった法務部に応募する場合

  • 4.まとめ

転職を成功させるためには、情報収集が大切です。情報収集の手段には色々な方法がありますが、お薦めの方法は「読書」です。インターネット上の情報は、手軽に入手できるというメリットがありますが、誤った情報を身につけてしまう危険があります。書籍であれば著者が責任を持ってリサーチをした情報が載っているため、安心して読むことができます。

一冊の本を読むのには時間がかかりますが、転職活動に役立つだけでなく、将来の仕事に役立つ知識を身につけることができます。転職の面接の場でも、「〇〇という本を読んで、転職後にすぐ対応できるように勉強しています」と言うと、即戦力の人材として評価が高くなります。反対に、「転職後の仕事に備えて、インターネットで〇〇について検索しています」と言っても、プラスの評価にはつながりません。

それでは、転職に向けてどのような書籍を読めばいいのでしょうか?今回は、書評連載の第2回目として、「会社役員のための法務ハンドブック」を紹介します。

1.「会社役員のための法務ハンドブック」とはどんな本?

今回紹介する「会社役員のための法務ハンドブック」は、会社役員を対象にした企業法務の解説書です。「取締役などの役員が、ふと疑問に思うこと」をテーマにして、50個の項目に分けて解説されています。各項目は4〜6ページにコンパクトにまとまっているため、通勤時間などの隙間時間に手軽に読むことができます。

1-1.お勧めする理由

法務部員は、会社経営に関わる重要な意思決定に携わることがあります。M&Aについて戦略的なアドバイスをしたり、企業の不祥事を未然に防ぐシステムを確立したり、役員研修を行って企業コンプライアンスについて教示したりします。

法務部での勤務経験が長くなると、役員と直接接触する機会が増えるようになり、重要な経営判断についてアドバイスを求められるようになります。役員にアドバイスをする際には、法律のルールだけでなく、会社の経営状況やコンプライアンスの問題などを総合的に考慮しなければいけません。契約書作成などの通常業務とは異なり、「ビジネス的なバランス感覚」が必要となります。

役員をサポートすることは、法務部の重要な職務です。このような業務に備えて、「役員目線」で企業法務を見つめ直しておくことが必要です。「会社役員のための法務ハンドブック」は、会社役員を念頭に置いて書かれた書籍であるため、役員目線で企業法務を復習することができます。

また、この本を手元に置いておけば、突然役員から質問されたときに慌てることなく対応することができます。役員研修を行う際には、研修テキストとして使うこともできます。

1-2.企業法務の専門家が執筆した基本書

「会社役員のための法務ハンドブック」は、企業法務に精通した6人の弁護士による共著です。ビジネスロイヤーが書いた本だと聞くと、「会社法の細かい条文が羅列されているのではないか…」という抵抗を感じる人がいるかもしれません。しかし、この本は「会社役員は、細かい条文や判例を知っている必要はない」ということをコンセプトにしており、難しい法解釈が出てくることはありません。法務部での勤務経験が短い人や、法学部で基礎知識を身につけていない人でも、すらすらと読み進めることができます。

会社役員に高度な法律知識は必要ではないものの、「問題になりそうなことを察知する能力」は必要です。この書籍は、この能力を身につけることを目的としています。この本を通読すれば、「ビジネス上どのようなところに法律問題が潜んでいるか」を感覚的につかむことができます。

2.どんな人にお薦め?

会社の規模にもよりますが、法務経験が5〜10年になると、取締役会や株主総会のマネジメント、反社会的勢力への対応や不祥事対応、デューディリジェンスなどのM&A業務など、経営の根幹に関わる業務を任されるようになります。このような業務を担当する可能性がある人や、既に担当している人は、一読しておくことがお薦めです。

3.お薦めの読書法

「会社役員のための法務ハンドブック」は、イラストを交えて分かりやすく解説がされています。前提知識を持たない人を対象として書かれているため、法学部を卒業していない人や、法務部での実務経験が少ない人でも、読みやすい構成となっています。テーマごとにコンパクトにまとまっているため、時間がある人は全体を通読することがお薦めです。

しかし、転職活動をしている方の中には、「転職に直結する知識だけ身につけたい」という人がいるかもしれません。このような人のために、下記では、転職先の企業の傾向をふまえた効率的な読み方を紹介します。

3-1.大企業・一部上場企業などの大手企業に応募する場合

転職先として大企業を希望している人は、第2章「経営戦略」と第4章「コンプライアンス・規制関連」を読んでおきましょう。大企業の法務部では、組織再編や大規模なM&A、海外進出などの多様な業務に携わる可能性があります。第2章では、「企業の経営戦略にはどのような法律問題がひそんでいるか」を網羅的に紹介しています。大企業の法務部の業務は多岐にわたるため、第2章にざっと目を通して、おおまかなイメージをつかんでおきましょう。

第4章では、企業のコンプライアンスについて11個の問題が解説されています。大企業や老舗企業では、コンプライアンスに問題が生じるとマスコミなどで大々的に報道されるおそれがあるため、コンプライアンスの問題はより深刻です。大企業の法務部に応募する場合は、第4章の内容を頭に入れておきましょう。

3-2.「役員をサポートする法務部員」や「役員候補」として応募する場合

役員をサポートする法務部員として応募する場合や、役員候補のポストに応募する場合は、まさにこの本に書かれた内容の業務に関わることになるため、全体を通読しておくことがお勧めです。どうしても時間がないという場合は、第2章「経営戦略」、第4章「コンプライアンス・規制関連」、第5章「人事労務」だけでも押さえておきましょう。

余裕がある人は、併せて第1章「組織関連」も読んでおきましょう。第1章では、経営判断の原則を始めとして、役員の法的責任について基礎的な事項が解説されています。

3-3.グローバル企業に応募する場合

海外に子会社や支店を持つグローバル企業に応募する場合は、転職後に国際法務を担当する可能性があります。第2章の20「海外進出における留意点」、第3章の31「海外取引紛争における留意事項」、コラム「ディスカバリーへの対応」、コラム「外国公務員贈賄罪」を読んで、国際法務のイメージをつかんでおきましょう。

3-4.総務や人事と一体となった法務部に応募する場合

会社の規模によっては、総務部の一部門として法務部が位置づけられていることがあります。このような企業では、労務などの人事問題や、不祥事対応や株主対応などの総務的な業務を法務部員が担当することがあります。このため、総務・法務を網羅的にカバーする幅広い知識を身につけておくことが重要となります。

このような企業に応募する場合は、第4章「コンプライアンス・規制関連」と第5章「人事労務」に目を通しておきましょう。第5章では、「役員がセクハラやパワハラを行った場合はどのような法的責任を負うか」というように、役員目線で労務問題が解説されています。加害者目線で書いてあるため、役員の倫理研修やコンプライアンス研修を行う際に参考とすることができます。

4.まとめ

今回は、転職に役立つ書籍として、「会社役員のための法務ハンドブック」を紹介しました。法律書を通読するには時間がかかりますが、転職活動のためだけでなく、将来の仕事に役立つかもしれません。

転職に悩んでいる人にも、読書がお薦めです。転職活動が長引くと、モチベーションが下がってしまうことがあります。気分転換に法律書籍を読んでみると、転職の方向性が見えてくるかもしれません。志望動機を書くうえでのヒントが見つかることもあります。

転職を成功させたい人や、転職活動でお悩みの人には、読書がお薦めです。今回は、転職先の企業ごとの読み方を紹介していますので、本を読む際の参考にしてみてください。

記事提供ライター

元弁護士 ライター
東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、企業取引等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行う。

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