転職ノウハウ

【知財部員・弁理士向け】キャリアに活かせる「自己分析」の方法とは|知財分野のエージェントがオススメする自己分析手法を実例を踏まえて解説

【知財部員・弁理士向け】キャリアに活かせる「自己分析」の方法とは|知財分野のエージェントがオススメする自己分析手法を実例を踏まえて解説
INDEX
  • 自己分析とは何か

  • なぜ自己分析が必要なのか

  • 自己分析のタイミング

  • 自己分析の方法

  • 「どんな案件に心が動くのか」を見つける

  • まとめ

「自分のキャリア、ちゃんと言語化できますか?」
 
この質問に即答できる知財パーソンは、実は多くありません。
 
目の前の出願業務や社内対応に追われていると、「今のままでいいのか」を立ち止まって考える機会がないからです。
 
しかし、5年後・10年後を見据えたとき、「なんとなく選んできた」積み重ねと、「自分の軸で選んできた」積み重ねでは、キャリアの質がまったく変わります。
 
自己分析は、転職活動のためだけの作業ではありません。むしろ、今のキャリアに迷いがない人こそ、未来の選択を誤らないために必要な「思考の整理」です。

自己分析とは何か

自己分析とは、過去の経験・価値観・感情・行動の傾向を丁寧に整理し、「自分はどんな働き方を望むのか」「どんな環境で力を発揮するのか」という「自分の取扱説明書」を作る作業です。
 
転職や就職活動の場面だけでなく、
 
・部署異動
・担当技術分野の変更
・キャリアの岐路
・生活の変化
 
といった人生の分岐点で役に立つため、本来は「いつでも」「日常的に」行ってよいものです。
 
自己分析は「就活生っぽい」「転職を考えている人がやるもの」と思われがちですが、それは大きな誤解です。むしろ、順調に働いている今だからこそ、客観的に自分を見つめ直せるのです。

なぜ自己分析が必要なのか

ここでは、なぜ自己分析が必要なのか、2つの視点で解説します。

「なんとなく違和感」の正体を言語化する

自己分析を行うと、自分のキャリアの軸が整理されます。
 
「自分のことは自分が一番よく分かっている」と思いがちですが、実際には曖昧なまま判断している部分が非常に多いものです。
 
たとえば、
「なんとなく今の仕事が合っていない気がする」
「思い描いていたキャリアと少し違う」
「転職したいわけじゃないけど、今の環境がベストか分からない」
 
こうした「漠然とした違和感」は、自己分析で過去の経験や価値観を整理することで、原因が見えてきます。原因が見えれば、自然と進むべき方向も定まっていくでしょう。

転職活動の「下地」にもなる

さらに、自己分析は「転職活動の下地」になります。
 
・自己PR
・職務経歴書の作成
・求人選定
・面接の受け答え
・内定承諾
 
すべて「自分の軸」があるかどうかでクオリティが大きく変わります。
 
軸がある人は、応募先に合わせて表現を工夫しつつも、ぶれずに「自分が大事にしたいこと」を基準に判断できます。結果として、選択の後悔が少なくなります。
 
逆に軸がないと、「条件がいいから」「なんとなく有名だから」という理由で選んでしまい、入社後にミスマッチが起きやすくなります。

自己分析のタイミング

自己分析は、「さあ転職しよう」と決めた瞬間だけにやるものではありません。むしろ、日常の中で少しずつやっておくこと、そして節目のタイミングでしっかり時間を取ることの両方が大切です。
 
自己分析が役に立つ場面は、大きく3つあります。

① 実は「いつでもいい」――日常の中で少しずつやる自己分析

一番もったいないのは、「まとまった時間がないから、自己分析はまた今度でいいか」と先延ばしにしてしまうことです。
 
自己分析の入り口はもっと軽くてよくて、たとえばその日あった出来事に対して、
 
・今日は何をしているときに一番集中できたか
・どんな場面でストレスを強く感じたか
・どの瞬間に「これはちょっと違うかも」とモヤッとしたか
 
を、ほんの数行メモしてみるだけでも十分「自己分析」になります。こうした「日常メモ」が、いざ本格的に自己分析するときに大いに役立つのです。

② キャリアを見つめなおしたくなったとき

次が、いわゆる「キャリアを見つめなおしたい時期」です。これは、転職を決めた瞬間だけを指しているわけではありません。
 
・今の事務所・会社でこのまま進んでいくべきか、ふと不安になる
・業務には慣れてきたけれど、「本当にここでいいのかな」と感じる
・出願の実務が中心だが、より上流の知財戦略やマネタイズ(他社への牽制・ライセンス活用など)に関わりたいと感じ始めた。あるいは、発明の権利化だけでなく、事業や経営に近いところで知財を使う仕事に軸足を移したくなった
・ライフイベント(結婚・出産・介護など)とのバランスを意識し始めた
 
こうしたタイミングは、「価値観がアップデートされつつあるサイン」です。
 
この時期にじっくり自己分析に向き合うと、単に「不満を解消したい」だけでなく、
 
・自分が何にやりがいを感じているのか
・何に対して「違和感」を覚えているのか
・この先10年をどう過ごしたいと思っているのか
 
といった、より長期的な視点でキャリアを考えられるようになります。

③ 転職活動の準備~選考中

3つ目は、いよいよ転職活動を本格的に考え始めたタイミングです。
 
多くの人は、職務経歴書を書き始めてから慌てて自己PRを考えたり、エージェントに「どんな求人が合うと思いますか?」と聞いたりしますが、本来はその少し手前、「転職しようか迷っている段階」から自己分析を始めておくのがおすすめです。
 
・職務経歴書を書く前に、自分の経験をできるだけ細かく棚卸しする
・応募先を選ぶ時に、「なんとなく条件が良さそう」ではなく、自分の軸と照らして見る
・面接後に、「聞かれたこと」「うまく答えられなかったこと」に加え、面接官の反応(相手からどう見られたか)や、自分が応募先に抱いた印象(カルチャーフィット)も自己分析の材料として振り返る
 
こうして、「自己分析→応募・面接→フィードバック→もう一度自己分析」というサイクルを回せると、回数を重ねるごとに
 
・自分の言葉で話せるエピソードが増える
・「ここは違う」「ここは合いそう」という感覚が研ぎ澄まされる
・内定の有無にかかわらず、「次に活きる学び」が毎回残る
 
という状態になっていきます。

自己分析の方法

自己分析は、書き出す/深掘りする/分類するの3ステップが基本です。手順は複雑ではありません。大切なのは、「手を動かすこと」と「深掘りを恐れないこと」です。

① 自分史を書き出す

自分が生まれてからできるだけ長いスパンで「どんな出来事があったか」を書き出します。
 
・学生時代の出来事(とくに研究テーマや専攻の選択)
・アルバイト経験
・サークルや部活
・就職後の経験
・プライベートでの挑戦
 
など、仕事に関係なさそうなことほど「価値観の源泉」が隠れています。あるいは、「楽しかったこと」「つらかったこと」「頑張ったこと」など、喜怒哀楽のテーマごとにできごとを書きだしていってもよいでしょう。

② 出来事を深掘りする

書き出した出来事ごとに、次を丁寧に考えます。
 
・何が起きたか
・どう感じたか
・なぜそう感じたか
・どう行動したか
 
これは、ひたすら「なぜ」を繰り返す作業です。このプロセスで、自分の行動パターン・思考の癖・価値観の傾向が浮かび上がります。飾る必要は一切ありません。ありのまま書くほど「自分の核」が見えます。

③ 職務経歴を細分化する

ここがキャリアの自己分析において最重要です。仕事を「ざっくり振り返る」のではなく、粒度を細かくして棚卸しします。
 
・どんな役割を担ったか
・何が成果だったのか
・評価された点/されなかった点
・自分なりの工夫
・しんどかった理由
 
ここから、あなたが大切にしている価値観や働き方が見えてきます。
 
たとえば、企業の知財部員の場合、次のような具合です。
 
・どんな役割を担ったか
開発部門との発明発掘会議の運営と、外部特許事務所への指示・明細書レビューを担当した。
 
・何が成果だったのか
会議の進め方を見直したことで、出願候補として挙がる発明の数が増えた。
 
・評価された点/されなかった点
開発部門との関係構築は評価されたが、権利範囲そのものへの踏み込みが浅いと言われた。
 
・自分なりの工夫
技術者が発明を言語化しやすいよう、事前のヒアリングシートを整備した。
 
・しんどかった理由
自分で明細書を書く機会がなく、実務感覚が鈍っていく不安があった。
→以上から、「人と技術をつなぐ役割にやりがいを感じる一方、自分で手を動かす業務からも離れたくない」ということがわかった。
 
弁理士として特許事務所で働く場合も、同じように細分化できます。
 
たとえば、発明者ヒアリングから明細書ドラフト、中間処理まで一貫して担当してきた経験を振り返ると、「技術内容を深く理解したうえで権利範囲を設計する丁寧さは評価された一方、1件あたりの処理に時間がかかり、件数目標との両立に悩んだ」といった形で、自分の強みと課題が浮かび上がってきます。

④ 好き・嫌いで分類する

深掘りした経験を好き/嫌いで分けます。理由も必ずセットで書くと、後のステップが格段に楽になります。

⑤ 業務をさらに細分化して「なぜ」を探る

知財の仕事は、一見ひとまとまりに見えても、いくつもの工程に分解できます。企業知財部の業務であれば、たとえば次のように分けられます。
 
発明発掘(技術部門との会議)
→出願要否の社内判断
→明細書の作成またはレビュー(内製か外部事務所への依頼かは企業により異なる)
→中間処理の方針決定
→他社特許のウォッチング・侵害予防調査
→ポートフォリオの棚卸しと維持要否の判断
→知財戦略の立案(IPランドスケープ、出願方針への反映)
→マネタイズ(ディフェンス:他社への牽制・係争/オフェンス:ライセンス・売却・アライアンス)
 
同じ知財の仕事でも、内製で明細書まで書く企業もあれば、権利化は外部事務所に任せ、社内では戦略や調整に軸足を置く企業もあります。担当する範囲は、企業の方針によって幅がある点に注意が必要です。
 
とくに後半の知財戦略やマネタイズは経営に近い上流の工程であり、「この領域に関わりたい」という思いが、知財部員の転職動機になることは少なくありません。
 
特許事務所の弁理士であれば、権利化の業務は次のように分解できます。
 
発明発掘・発明者ヒアリング
→先行技術調査
→出願要否・出願戦略の判断
→権利範囲(クレーム)の設計
→明細書のドラフト
→出願手続
→拒絶理由通知の検討
→意見書・補正書の作成
→登録
→年金管理・権利の棚卸し
 
こちらも、大規模な事務所では工程ごとに分業していることがあり、事務所の規模や体制によって担当する範囲は異なります。
 
このそれぞれについて、「なぜ好き/嫌いなのか」「なぜ得意/不得意なのか」を言語化します。
 
同じ「特許の仕事」でも、心が動く工程は人によってまったく違います。発明者の話から本質を引き出す瞬間が好きな人、白紙からクレームを組み立てる瞬間が好きな人、他社特許を読み解いて回避策を考える瞬間が好きな人――どこに惹かれるかによって、向いている職場は変わります。
 
すると、「得意だから好き」ではなく「夢中になれるから強みになる」という感覚が得られます。不得意でも夢中になれるものは、将来の強みに変わります。

⑥ 自分はどう働きたいのか?

ここまでの整理をもとに、
 
・得意なことを仕事にしたいのか
・夢中になれることを軸にしたいのか
・成果を出しやすい環境を優先したいのか
・ワークライフバランスを重視したいのか
 
という「働き方の価値観」を言語化します。

⑦ 将来像を描く

5年後・10年後の理想像を明文化します。現状とのギャップがあるなら、「どうすれば近づけるのか」を考えることが、行動計画につながります。

⑧ キャリア軸が明確になる

以上のプロセスで見えてくるのが、あなたのキャリアの中心となる「軸」です。1つではなくて構いません。複数あっても、最終的に「選ぶ基準」として機能すればOKです。

「どんな案件に心が動くのか」を見つける

知財の仕事は、扱う技術分野や権利の種類、業務のフェーズ、組織の文化などによって、まったく違います。同じ「特許の仕事」でも、機械分野と化学分野では求められる知識が違い、権利化と係争では「やりがいの源泉」も異なります。
 
そのため、「どんな案件に心が動くのか」「どんな環境が自分に合うのか」を自己分析によって把握しておかないと、入社後のギャップが大きくなります。ここでは、知財ならではの4つの切り口を挙げます。

① 技術分野で考える

機械/電気・電子/情報通信・ソフトウェア/化学・材料/バイオ・医薬など、どの技術分野を主戦場にするかは、知財パーソンにとって大きな軸です。
 
多くの場合、学生時代の専攻や研究テーマがそのまま専門分野の土台になります。加えて、知財の求人は募集の段階で技術分野が指定されることが多く、これまで培った専門分野が、応募できる求人の幅を大きく左右します。
 
そのため、分野をまたぐ転職(たとえば電気系から化学・バイオ系へ)は、一般にハードルが高くなる点は知っておくとよいでしょう。

② 権利の種類で考える

特許・実用新案/意匠/商標のいずれを中心に扱うかでも、仕事の質は変わります。
 
商標はブランドや法律的な判断の比重が高く、特許は技術との距離が近い仕事です。意匠は近年の法改正を受けて重要度が高まっています。
 
同じ知財でも、求められる資質が異なる点を意識しておきましょう。

③ 業務フェーズで考える

知財の仕事は、どのフェーズに関わるかによっても性格が変わります。

 

フェーズ 内容
権利化(出願・中間処理) ゼロから権利を組み立てる仕事
調査・分析(先行技術調査、侵害予防調査、IPランドスケープ) 読み解いて判断材料をつくる仕事
係争(無効審判、審決取消訴訟、侵害訴訟への関与、警告対応) 争点を立てて戦う仕事
活用・契約(ライセンス、共同開発契約、職務発明規程の運用) 事業と交渉に近い仕事

 

どのフェーズにやりがいを感じるかは人それぞれです。自分がどの局面で力を発揮できるかを、これまでの経験から振り返ってみましょう。

④ 案件の濃さで考える

扱う分野だけでなく、「案件の濃さ」も自分との相性を左右します。

 

志向 向いている業務・案件
1つの案件に深く長く関わりたい 大型ポートフォリオの構築、標準必須特許、係争案件など
多様な案件を広く経験したい 中小企業・スタートアップ支援、複数技術分野の受任など
定型業務が中心でも安定していたい 商標出願、期限・年金管理、内外案件の対応など

 

どのタイプが自分に合うのかは、これまでの経験を振り返ると見えてきます。1つの案件にじっくり向き合ったとき充実していたのか、それとも多様な案件を次々に手がけるほうが楽しかったのか。締切に関係なく手が動いた案件と、義務感だけで進めた案件を思い返すと、自分がどの濃さを心地よく感じるかが分かります。

組織文化との相性も見逃せない

知財の働き方は、企業知財部か特許事務所かによっても大きく左右されます。

 

比較項目 企業知財部 特許事務所
評価されやすい点 事業への貢献、部門間の連携 件数、処理スピード、明細書の質
手の動かし方 自ら書く場合もあれば、外部事務所を管理する場合もあるなど、企業によってさまざま 自分で書くことが中心
技術の幅 自社製品を軸に、狭く深くなりやすい 複数のクライアントを扱うため、広くなりやすい
時間軸 中長期の戦略や社内調整が多い 案件単位で期限が明確

 

加えて、内外・外内案件の比率、担当制か分業制か、所内で技術分野が固定されるか、といった観点も、事務所・企業選びの軸になります。こうした「働き方の好み」は、自己分析で言語化しておくと、応募先を選ぶ際の判断基準になります。

まとめ

自己分析は、「転職迷子のための作業」ではありません。むしろ、順調に働いている今こそやるべき「未来への投資」です。一度取り組んで終わりにするのではなく、定期的に見直していくことがより効果的です。
 
業務内容は数年たつとすぐに記憶から抜けてしまいますし、価値観も自然と変化していきます。そのため、日々の中で気づいたことを軽くメモしておき、年に一度まとめて棚卸しするという「二段階」で取り組むのがおすすめです。
 
自己分析を重ねていくことで、日々の意思決定がしやすくなるというメリットもあります。自分が何を大切にしたいのかが明確になるため、業務での判断はもちろん、キャリアの選択やプライベートの過ごし方まで迷いが減ります。また、思考整理や言語化の“癖”がつくことで、自分の考えを相手に伝えやすくなり、コミュニケーションがスムーズになります。
 
とはいえ、自分の強みをうまく言語化できなかったり、考えが堂々巡りになったりと、一人で自己分析に取り組むことに限界を感じる瞬間も少なくありません。とくに、知財のキャリアは技術分野や資格、事務所と企業の違いなど業界特有の視点も絡むため、客観的なフィードバックや第三者の視点が効果的です。
 
C&Rリーガル・エージェンシー社では、弁理士・知財人材のキャリア支援を行うキャリアアドバイザーが、あなたの自己分析の壁打ちから、キャリアの方向性整理、求人紹介、面接対策まで丁寧にサポートします。自己分析に行き詰まったとき、誰かに話したくなったときは、ぜひ一度ご相談ください。

ライター

中澤 泉(弁護士)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。その後フリーランスのライターとして活動を経て、現在は合同会社ことりうみにて法律分野を中心にライター・編集者として活動するとともに、弁護士としても企業法務に携わっています。

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